何週間か前、ある患者さんと話をしていたら、自分の知り合いで美容外科の手術を受けたがどうやら失敗したようだとおしゃる。どんな失敗かとお聞きしたら、顎にシリコンを入れたが、唇まで変形しているとの事。でも、よくよく聞いてみると、手術をやってからまだ1週間位しか経っていないようで、この時点で失敗と決めるには少々早いような気がしました。そこで、“術後でまだ腫れが残ってるんではないでしょうかね”と私が言うと、“いや、先生は3、4日しか腫れないと手術の前に言ったので”とその患者さんは、おっしゃるので、私は“手をぶつけただけでも腫れるのに、どうして手術が腫れないなんて本気で考えるんでしょうかね?”と聞き返すと、“そう言えば、そうですね”と非常に真面目な表情で考え込まれてしまいました。
最近、同じ患者さんに御会いする事が出来たので、“そう言えば、あの患者さんはどうなりましたか?”とお伺いすると“ああ、もうすっかり唇は治ったようですよ。先生の言った通りでした”と返事が帰ってきたので、何だか他人事ながらに、ほっとしてしまいました。
実は、こんなやりとりは日常茶飯事で、結構これが時としてトラブルの原因だったりします。というのは、患者さんというのは社会生活をしている訳で、腫れが引く時間というのは、患者さんにとっては大問題なのです。ですから、腫れが引かないと会社には行けないといった社会生活上の問題が生じて来て、医者が“嘘つき”ということになって、クリニックにクレームを言いに来てしまうんでしょうね。これは、医者にとっても患者さんにとってもあまり良い事ではなくて、せっかく良い手術をしても患者さんからは恨まれることになってしまったりします。
ところが、腫れると術前に説明すると手術そのものが恐くなって、結局手術をしなくなってしまう。美容外科医としては、こんな感じで全ての患者さんがいなくなってしまっては、自分の生活が成り立たないと考える様で、“そんなに腫れませんよ”と言ってしまうんでしょうね。
では、一体どうすればいいのでしょうか?実は、答えは非常に簡単で、医者が嘘をつかないようにすればいいんです。実際に前にいた所の院長は、“腫れますよ”とか“痛いですよ”とか言ってましたが、案外手術がキャンセルになることは少なくて、“嘘はいけません”とよく教えられたものです。今は、私は保険診療を主体とした生活をしているので、美容外科のカウンセリングにタッチすることは少なくなってしまいましたが、皮膚にメスを入れる説明をする際には、“痛いですよ”“腫れますよ”と患者さんにはよく言っています。もしかしたら、本当はすごく恐れられているんじゃないでしょうか?
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