最近、患者さんに手術前に承諾書を記入してもらおうとしたら、過敏に反応されて、“えっ。承諾書、書くんですか?”と言われる方がいらしたので、私もびっくりして“書きたくない理由がないかあるんですか?”と聞き返すと、“これって書くと、文句とか言えないって事ですよね?”と言われたので益々驚いてしまいました。
おそらく、患者さんの中には承諾書というのが、医者が保身の為に書かせていると誤解している方が、結構いらっしゃるためなのではないでしょうか?私は法律家ではないので、あまり詳しい事は書けませんが、そもそも承諾書というのは、あくまで、手術をされる事を承諾したという事で、それ以下でもそれ以上でもないのです。法的に言うと、業務上過失傷害という刑法上の責任を医師が逃れるためのもので、簡単に言うと患者さんが納得もしていないのに、患者さんの身体に傷をつけると、たとえ医者でも、単なる傷害行為とみなされ、けんかで人を刺したりするのと同等に扱われるのを避けるという意味合いなのです。これは、医師免許だけに与えられた特権で、どんな人でも人に怪我をさせると“傷害罪”になるのが、“治療を目的とした場合”は例外的に、医師は人の身体にメスを入れたり出来るという事なのです。ですから、その行為が治療目的で無かったり、本人が納得していなかった場合は、一般の方と同じように傷害罪に問われる危険性があるのです。
このように書くと、笑われる方がいらっしゃるかもしれませんが、最近安楽死の問題でも浮上しているように、本人の意思や家族の納得がないとみなされると、殺人罪として起訴されということが実際に起こるのです。本来、こうした意味合いをきちんと医師が説明するべきなのでしょうが、時として説明不足があるようで、上記のような誤解を生んでいるのではないでしょうか?私は、よく患者さんに“書類というのは、お互いの間の話しを記録するもので、決してお互いの権利を侵害するものではないのですよ”(法的に解釈が違っていたら、
ごめんなさい)と言うのですが、他院で、承諾書に“手術のクレームは言わない”という文面が含まれていたとおっしゃる方もいらっしゃいます。
しかし、法的におかしい文章は、契約書としてみなされないので、そのような文面にサインしても、拘束力は生じて来ません。ただ、美容外科の手術に関して、時として大きなトラブルが生じてしまうのは、“気に入らない”と患者さんが“主観的に”思う場合で、いわゆる合併症(神経が麻痺したとか、誰が見ても明らかに社会生活に差し障りが生じるような出来栄え等)以外は、訴えても法的な責任が明確にされない事があるせいなのではないでしょうか?最近このようなトラブルが増加しているようですが、これも私がどこでも書いているように、患者さんと医者の綿密な術前の打ち合わせによって、かなりの部分が回避できるのではないでしょうか?いずれにしても、サインをする前に分らないところは、担当医に質問して、納得出来なければ、手術を延期したり、中止する勇気を患者さんにも持っていただきたいものです。
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