時々患者さんと接していて、私が動揺している事もあるという事を書こうかと思います。特に合併症を起こしてしまったときは尚の事です。私は医者ですので、手術が完璧でない事も、時として合併症が起きるという事も認識して手術はしていますし、術前には患者さんに合併症になる事もあり得るという事もお話しています。でも、患者さんにしてみれば、合併症と言われても、実際にどのような状況になるかという実感が湧いていないことがほとんどですし、実感を湧かせる写真もそんなに持ち合わせていないので、実際に合併症がおきてしまうと、お互いにかなりブルーな気持ちになってしまいます。ここで、実際に私が起こした合併症と、その時の自分の気持ちを書いてみようかと思います。
手術は、フェースラインの脂肪吸引で具体的には、顎、頬の脂肪吸引をしました。この手術は、それまで小さな皮下血腫を起こしたことがある位で、大きな問題を抱えた事が無かったので、自信も結構あったのと、アメリカで見ていた手技が自分よりも粗雑である気がしていたために、かなり気楽に手術をしたのを覚えています。術後2日は通常道りの経過で、若干口が動かしにくいとの患者さんの訴えもあったのですが、いつもの事だと思い、気にもせずに経過を観察していましたが、術後2週間経っても口の動きが良くならず、口角を下げる筋肉が片方麻痺しているのが分りました。術後の2週間ではこのような症状が、麻酔の影響でなることもあるので、自分としては大丈夫だと思い込もうとしていた(実際には、治らなかったらどうしよう?と焦っていました)のですが、1ヶ月経過しても症状に改善が見られず、大学の形成外科の先生や、ニューヨークで仲良くなった韓国の助教授の友達などに相談してみたのですが、私の術中の所見や手技を聞いた先生方は“個人差があるけど、絶対に治るよ”と元気づけてくれはしたものの、夢にまで患者さんと話している光景が出る始末で、不安な毎日を過ごしていました。
この症状が出るためには、顔面神経下顎枝という神経を損傷しなければならず、神経走行の位置、私の操作の位置および深さなどを考えてみても、神経を損傷した可能性は非常に低く、自分としても症状が出ている理由が納得出来ず、かなりブルーになってしまったのですが、そうこうしているうちに患者さんも来なくなってしまいました。しばらくいらっしゃらなかったので、こちらからお電話をしてみると、“かなり良くなったので、大丈夫そうです。”と言われはしたものの、ずっと気になっていました。先日、その方が見えて、症状はすっかり治っていたので安心したのですが、今度は“お腹の脂肪吸引をして欲しい”と言われてしまいました。私としては、前回の事があるので、“また脂肪吸引か”と思わず言ってしまったのですが、結局患者さんに説得されて、やる羽目になってしまいました。この時、“医者は手術した患者さんの事は結構気になっているので、良くなっても見せに来て欲しい”と患者さんにお話しすると、“飼っていた犬が寝たきりで介護に忙しかったの”と言われてしまい、少々複雑な気分になってしまいました。
最近、大学の同級生(彼は消火器外科医です)と飲みに行ったので、このような事を話すと、“術後に不安になることは結構あるけど、自分の相手は病人だからな。健康人相手ならなおさらだな”と言われました。我々医者はどんな科の者でも多かれ少なかれ同じような悩みがあるのだと思います。大学の授業で、ある外科の先生が、“医者っていうのは、ある意味で、孤独に耐えられなければいけないんだ”とおっしゃった方がいましたが、最近になって、彼の言葉がようやく理解出来たような気がしています。
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