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時々、患者さんに“抜糸がいらないように溶ける糸で縫って欲しい”と言われる事があるので、これらの根本的な違いを書こうかと思います。溶ける糸の具体的な成分等をここで書いても、あまり意味がないと思いますので、実際に患者さんと接していて問題となる事について触れようと思います。
まず、“溶ける、溶けない”という事が、何故話題になるかということなのですが、“溶ける糸で縫えば、通院が要らない”と患者さんが誤解してしまうからなのです。これが、まず根本的な間違えで、糸というのは傷口が動かないように固定しておくもので、例えて言うならば、接着剤を塗った木と木を動かないように固定している万力のようなものなのです。これに対して、通院をしてもらう目的というのは“傷口のチェック”で、言い換えれば術後の経過を診るのが目的なので、糸の役割とは全く別物なのです。
また、糸が溶ける必要があるのは、身体の中に埋め込む場合で、具体的には抜糸が出来ない所(例えば腸など)を縫う場合なのです。ですから体表面を溶ける糸で縫うことは原則的に(口の中とかを除いて)無いのです。では体の表面を溶ける糸で縫うと、どういう事になってしまうのでしょうか?
糸が溶ける際に“糸が体に食べられる”という反応が起こり、糸と接している部分が硬くなります。皮膚を縫った場合ですと、糸の跡がくっきりと残り、傷跡がとてもきたなくなってしまいます。もちろん、体質によっては跡が残らないこともありますが、大抵は跡が残るので、形成外科を勉強した先生(そうでなくても手術をする先
生)は、“溶ける糸は皮膚を縫うのに使わない”というのが、通常です。
この事を書こうと思ったのは、冒頭にも書いたようなリクエストを患者さんから受ける事があるという以外に、一部のクリニックで、包茎手術の際に溶ける糸を使用して縫うために、患者さんが傷口を気にして、また他の医療機関に行って修正手術を受けているという現状が目についたからなのです。たしかに、溶ける糸というのは聞こえが良いのですが、抜糸が要らないという事と全く同じではなく、むしろ医者が患者さんに術後に会わなくていいようにしているとも言えるのではないでしょうか?特にひどい場合ですと、“綺麗に治るように、溶けない高い糸で縫うから”と言って、法外な糸代を請求するクリニックもあるようで、そうした事を患者さんから聞くと、悲しい気分になります。我々医師は、患者さんよりも医療知識があるだけで、根本的には患者さんと何も変わらないので、患者さんには必要な医療知識を教えて、患者さんが適切な判断を下せるような状況を作るのも仕事なのではないでしょうか?
自費の手術というのは、高額なだけに、患者さんも術前に十分な金額的説明を受けてから決めて欲しいものです。
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